平成30年は記録的な豪雪となりました。
道路はガタガタですし危険を伴う除雪作業など皆様も大変なご苦労をされたことでしょう。
弊社もお引渡しをさせていただいたお施主様を中心に依頼を受け雪降しや除雪作業を行う中、いくつか気づきがありました。
今回は豪雪地域で家を建てる際、こうした方が良いと思われる建て方についてです。
A.屋根雪の処理方法
まず、雪国の家で考える事は屋根に降った雪の処理をどうするか?を考えます。
雪は思ったより重く、含む水分量で差もありますが、福井県では積雪量1pごと1uあたり30N(約3Kg)に設定され積雪1mで300Kgもあり、40坪程度の家の屋根面積約85uで換算すると2.5tです。
屋根雪の処理方法は、冬の安全の為にとても重要です。
1.自然落下の屋根にする
板金の屋根材に雪止めを設けず雪を自然落下させる方式です。
雪を堆積しておく広い敷地は必要になります。
メリットは屋根に雪が残らないので家の傷みも少なく、雪降しの際の危険はありません。
デメリットは地上に降った雪の上にさらに屋根の雪が積もるので固くて重い雪となり
排雪は非常に重労働で、排雪すべき時期も頻繁になります。
特に注意することは、雪が落下する場所にお子様を近づけないようにする事
玄関前や大きな窓の場所に大量の雪が落ちる設計は避けましょう。
事前に雪囲いを行う等の措置は有効です。
2.屋根を雪置場として利用する。
積雪荷重を検討して屋根を雪置場として利用する方式です。
屋根に雪が載った時の地震を想定し壁量計算を行う必要があります。
弊社では原則、福井県高耐震基準による積雪量2mの壁量で設計していますが、対応積雪量を超えると雪降しが必要になります。
屋根材や雨樋等の傷みが発生する可能性もありますので早めの対応をお勧めします。
メリットは積雪が少ない場合、家の周りの排雪する必要が少なくなります。
南の屋根面を大きくすると雪は太陽に照らされ良く溶けます。
デメリットは降雪時の地震対策や雨仕舞に注意が必要となります。
雪降しの際の人材確保や費用も必要となります。
注意することは、雪降しするスペースを出来るだけ確保しておくこと。
軒先からは敷地境界線までは最低2m離して建てるようにしましょう。
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雪降スペースの確保 |
3.屋根融雪装置を付ける
屋根雪を融雪させて積雪荷重を軽減させる方式です。
軒先に発熱体を集中させ効率良く運転させる為、降雪センサーを組み合わせる事もあります
灯油式が最も普及していましたが電気式が多くなってきました。
デメリットは初期投資が大幅に上がり、ランニングコストも掛かります。
メンテナンスにも注意が必要です。
4.どの方式が良いのでしょうか?
どの方式が良いのかは、敷地の条件や家族構成、コスト等によって異なります。
雪国での施工実績豊富な工務店と相談しながら進めると良いでしょう。
B.軒先を守る
雪の被害で多いことのひとつに「ハケラが折れる」事があります。
これは軒先が積雪荷重に耐えられずでポッキリと折れる事です。
軒先が折れてしまうと雨漏り等で家の構造体に被害を及ぼすので早急な補修が必要です。
軒は日差しの調整をし、雨水から外壁や窓を守るので
住宅の耐久性を高める上で無くてはならない大事な部分です。
1.軒の出を支える垂木(たるき)とは
垂木とは小屋組構造材のひとつで棟から軒へ一定間隔で打ち付けられた角材です。
垂木は外壁から跳ね出した構造となるので積雪時には最も弱くなりがちな部位となります。
垂木の強さは材料の寸法(特に成の高さ)や間隔によって決まります。
また、屋根の防水施工が悪いと雨がしみ込んで腐ったり長期間の積雪で経年変化が起こり弱くなることがあります。
一般的に幅45o×成60o 間隔455oが多いようですが、
弊社標準は 在来工法 幅45o×成60o 間隔303o
軒先第一母屋まで込垂木(間隔151.5o)
軒の出によっては成75oの採用
2×4工法 幅38o×成140o 間隔455o
軒の出を大きくする為には、基礎や構造体の補強も必要となります。
短すぎるのも問題有ですが、大きくするのであれば構造計画に注意が必要です。
2.地上の雪と連結したら要注意
雪降し等で庭の雪と下屋の雪が繋がってしまうことがあります。
この際は屋根の上の雪が地上の雪に引っ張られることになり、屋根の積雪荷重+地上の積雪荷重が軒先に集中するため大変危険です。
出来るだけ速やかに軒先部の雪を切り離してください。
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地上の雪と連結したら要注意 |
その他、軒先に巻垂れ、雪庇、せり出しを伴う積雪は
均等な積雪時のの曲げ応力・せん断応力が4倍以上になる為
軒先だけでも雪降しする事は大変有効です。
雪降しの際は、1.軒先 2.ケラバ 3中央部 の優先順位を付けて
瓦など屋根仕上材料を傷つけないように少し雪を残す感じで降ろすと良いでしょう。
足場が滑りにくくなるので落下防止にもなります。
軒先・ケラバのみ降ろす様子
3.屋根の谷部は最小限に
谷部とは屋根のつなぎ目が谷折りとなっている部分です。
二面の屋根雪が一カ所に集中し、大きな荷重が集中しやすいので
雨樋や軒先を傷つけやすくなります。
敷地状況によりどうしても必要なケースはありますが
屋根の谷部は最小限に押さえ、シンプルな屋根形状となるよう設計しましょう。
C.その他に注意すべき点
1.雪の影響のある部分の外壁はガルバリュム鋼板がおススメ
雪を堆積しておくスペースが少ない場合、外壁に雪が付いた状態で
しばらく放置しておく期間が発生します。
降ろした雪は固くて重くなり、外壁にダメージを与える事になります。
現在の所、雪の影響のある部分の外壁はガルバリュム鋼板をお勧めしています。
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外壁に雪荷重のかかる様子 |
2.二階のバルコニーは避けたほうが無難
軒先と同様に跳ね出した形状のバルコニーを設けると、積雪時には非常に大きな応力が発生します。
また、バルコニー内部の除雪は大変で、窓が割れる事もあります。
冬は使い道の少ないバルコニーは避けた方が無難です。
どうしてもつける場合は、一階に支持柱等で補強して跳ね出さないようにして、
しっかりした躯体の屋根を設けましょう。
3.アルミカーポートは早めに対応
弊社では原則として、積雪1.5m対応のアルミカーポートを提案しています。
アルミカーポートは積雪により柱根元に大きな応力が掛かりますので
特に梁スパンの長い2台用カーポートは注意が必要です。
冬季は梁中間に支持柱を設け、梁スパンが短くなるようにしたり
早めに雪降しするようお願いします。
カーポートは早めに対応
D.ご近所関係を大切に
雪降しや除雪の際には近隣トラブルがつきものです。
降ろした雪が道路を塞いでしまったり、お隣の塀を壊してしまったり…
災害時は隣近所協力しあってトラブル回避したいものです。
普段からご近所関係を大切にしましょう